紙を漉く

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    ━━「母の一句」━━━━━━━━━━━━━━━  

     

      紙を漉く妊婦いただく額の汗   山口紀久枝

     

    ━━━━━━━俳句雑誌「北十字」(昭和26年10月号)より━ 

     

    昨年、母に関するいくつかの貴重な資料を得た。

    その一つが掲句を含む俳句雑誌「北十字」である。

     

     

     

    「北十字」は、昭和25年11月に創刊された同人誌で、加藤楸邨の主宰誌「寒雷」の衛星誌「天雷」を継承した。当時「寒雷」で活躍していた飯田旭村(いいだきょくそん)を代表とし、主に福井県同人の活動の場となっていたようだ。

     

    母を俳句の世界へ導いてくださった恩人で、「北十字」の編集発行人をされていた大坂淝水(おおさかひすい)さんと、幸運にも連絡が取れ直接お会いできた。「北十字」は昭和31年、福井県現代俳句雑誌「幹」に継承されるが、創刊号から昭和27年まで、母の活躍した期間全ての号をご恵贈いただいた。

     

    この句は、「北十字」の「次代作品抄」に母が初投句した3句のうちの一句。他に以下の句がある。

     

      炎天や紙漉くことを羨まれ      山口紀久枝

     

      瀧つぼに子を泳がせて髪洗ふ

     

     

     

    母が引揚げ後の混乱の中で娘を栄養失調で亡くし離婚した頃だから、同じ職場の紙漉女工の姿を詠んだものだろう。妊産婦や乳飲み子を抱えた女工の辛さや、紙漉く所作の気高さについてはよく語ってくれた。

     

    母は、戦後のどさくさで希望を失い自暴自棄になっていた頃、「寒雷」や「北十字」にせっせと投句し、「生きる力」を得たのだろう。

     

    母を再生させた「俳句の力」を改めて実感した。

     


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    プロフィール

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    俳句結社「雉」同人。俳号、亜紀。 「京大俳句を読む会」運営委員。俳人協会会員。 ホームページ「平和への祈り」を管理。 「俳句誌「雉」HP「支部のページ」に、 「関西地区だより」を発信中。

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