戦後70年の夏に

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    母の手記を読む(1)

     

    母が脳梗塞で緊急入院してもうすぐ1か月になる。体重は28キロのままだが、最近頬がげっそりこけてきた。看護師さんによると、喋ることができず、また注入食で口を動かさなくなったから筋肉が落ちたのだろう、とのこと。

     

    なるほど、確かに倒れる前の母は自分の歯約20本で、大好きな干芋も噛み切っていた。

     

    私は毎日病院に通い、まだ動く方の母の左手を握りながら母の書き溜めた手記を音訳している。これがなかなか面白い。かつて母が出版した本の原稿ばかりだろうと思っていたが、段ボールから出てきたのは、NHK学園文章教室に課題として提出していた手記ばかり。一遍ずつテーマを持ち、実に読みごたえがある。 

     

    当初私は、ほとんど意識のない母への良い刺激になると思い音訳し始めた。それが今では、母自身に読み聞かせてもらっているような気持になっている。

    母の人生の集大成とも思える手記は約25年分。中身までずっしりと重い。


    手記の束.jpg

     

    一遍ずつゆっくり音訳しているが、母は時々その情景を思い出したかのように強く手を握り返してくる。時にはうっすら涙を溜めることも。

     

    身体の機能がほとんど失われても、最後聴覚だけは残るということをよく聞く。母は私の音訳によって、自分の人生を走馬燈のように振り返っているのだろうか。また、私たちへ何らかのメッセージを残そうとしているのかもしれない。

     

    母の表情が穏やかなことに、何より救われる。

     

     

    母眠るまでの添寝や夏の月  亜 紀



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    プロフィール

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    俳句結社「雉」同人。俳号、亜紀。 「京大俳句を読む会」運営委員。俳人協会会員。 ホームページ「平和への祈り」を管理。 「俳句誌「雉」HP「支部のページ」に、 「関西地区だより」を発信中。

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